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停電の備えというと、まず明かりと連絡手段が思い浮かびます。ただ、夏に停電すると、先に問題になるのは別のところです。冷房が止まることと、冷蔵庫が止まることの2つです。
この記事では、ポータブル電源でエアコンを動かせるのかを計算したうえで、限られた電気をどこから回すかを整理します。結論から書くと、エアコンは現実的ではありません。
結論:夏の停電は「エアコン」ではなく「扇風機と冷蔵庫」で考える
- エアコンは、ポータブル電源では時間がもちません(下で計算します)
- まず扇風機かサーキュレーター。消費電力が一桁小さく、同じ容量で長く動きます
- 冷蔵庫をどうするかを先に決める。夏はここが冬といちばん違います
- 消費を減らせば、同じ容量で長くもちます(容量を増やすより先にできること)
「何Whのものを買うか」より先に、「何に使うか」を決めるほうが失敗しません。
容量の決め方そのものは別の記事にまとめました。ここでは夏に限った優先順位の話をします。
ポータブル電源でエアコンは動かせるか
ポータブル電源に書かれている容量(Wh)が、そのまま使えるわけではありません。変換のロスがあるため、実際に取り出せるのは表示の8割程度とされます。ここでは500Whの製品で、使える分を400Whとして計算します。
約13時間
約10時間
約30〜50分
消費電力は製品によって幅があります。お使いのものは本体の表示かカタログで確認してください。エアコンは動き始めにさらに大きな電力を使うため、上の時間より短くなることがあります。
同じ電源で、扇風機なら10時間、エアコンなら1時間持ちません。桁が違います。
しかも、時間の前に定格出力の壁があります。容量が足りていても、その製品が同時に出せるW数を超えると動きません。エアコンを動かすには、容量だけでなく出力の大きい製品が要ります。そこまでの製品になると、重量が20kgを超えてきます。
Wh の計算のしかたと定格出力については、ポータブル電源は防災用に何Wh必要?にまとめました。
扇風機やサーキュレーターを一晩動かす用途なら、500Wh前後の製品でも足ります。まずこの帯から見るのが現実的です。
夏だけの問題:冷蔵庫と取り合いになる
冬の停電と夏の停電で、いちばん違うのがここです。冬は冷蔵庫が止まってもしばらく持ちますが、夏は同じようにはいきません。
冷蔵庫の消費電力は約100〜150Wですが、ずっと動いているわけではありません。庫内が冷えれば止まり、温まればまた動きます。1日に必要な電力量としては、おおよそ600〜900Whが目安になります。500Whのポータブル電源では、1日はもたない計算です。
電源につながなくても何とかなる
- 扇風機(風がないよりはある方がよい程度なら、うちわでも代わる)
- 照明(乾電池のランタンで代わる)
- テレビ(情報はスマホのラジオアプリや乾電池のラジオで取れます)
つないでおく価値が大きい
- 冷蔵庫(開け閉めを減らしても、時間が経つほど中身が心配になります)
- スマートフォンの充電(情報と連絡の両方を兼ねます)
- 常温で置けない薬がある場合(保冷が要るもの)
冷蔵庫については、開け閉めを減らすと保冷が長持ちするとされます。停電した時点で、何がどこに入っているかを一度確認して、そのあとは開けない。これだけでも変わります。
復旧の見通しが立たない場合は、傷みやすいものをクーラーボックスへ移し、保冷剤や氷を入れるという方法もあります。クーラーボックスは電気を使いません。冷蔵庫の中身を全部は入れられませんが、優先度の高いものだけなら移せます。
消費を減らせば、同じ容量で長くもつ
容量の大きいものを買い足す前に、できることがあります。使う電力そのものを減らせば、いま持っている電源で動く時間が延びます。
どれも電源の話です。容量を増やすより先に、消費を減らすほうが安く済みます。
扇風機は「強」より「弱」のほうが消費電力が小さくなります。室温が下がるわけではありませんが、動く時間は延びます。
500Whでは足りないと感じる場合、次に検討されることが多いのが1000Wh帯です。Jackery Explorer 1000 New V3とEcoFlow DELTA 3 Classicの比較にまとめました。
エアコンを動かしたいなら、別の話になります
ここまでポータブル電源の話をしてきましたが、エアコンを停電中も動かしたいという場合は、容量帯が一桁変わります。持ち運ぶ機器ではなく、家に据え付ける蓄電池の領域です。
据置の蓄電池は工事が要りますし、金額も大きく変わります。ただ、太陽光発電と組み合わせると、停電が続いても日中に充電できます。持ち運べる電源にはできないことです。
検討する場合、価格は設置条件で変わるので、見積もりを取らないと判断できません。何を確認して比較すればいいかは戸建ての停電対策|蓄電池の見積もりで迷わないための4つの準備にまとめました。
集合住宅にお住まいの場合、据置の蓄電池は基本的に設置できません。その前提だと、扇風機を動かせる容量までが現実的な上限になります。
停電が続いた時間別に、何が要るか
| 続いた時間 | 冷房まわり | 冷蔵庫 |
|---|---|---|
| 〜3時間 | うちわ・手持ちの小型扇風機で足ります | 開けない。それだけで足ります |
| 半日 | 500Wh前後の電源で扇風機。直射を遮ると持ちが変わります | まだ開けない。復旧の見通しを確認します |
| 1日以上 | 電源は扇風機に絞る。エアコンは据置の蓄電池の領域です | 傷みやすいものをクーラーボックスへ移します |
3時間程度なら、電源がなくてもしのげます。備えるかどうかの判断は、お住まいの地域で停電がどのくらい続いたことがあるかで変わります。過去に半日以上の停電を経験しているなら、500Wh前後を1台持っておく意味があります。
夏に特有の、確認するところ2つ
- ポータブル電源自体にも動作温度の範囲があります。カタログに記載があるので確認してください。夏の車内に置きっぱなしにしないのが基本です
- 定格出力を、動かしたい家電のW数と見比べる。扇風機は小さいですが、冷蔵庫は動き始めに大きな電力を使います
容量(Wh)ばかり見て、動作温度と定格出力を見落とすことがあります。
置き場所は、家の中で温度が上がりにくいところを選んでください。車に積んでおくと、いざ使うときに温度で制限がかかることがあります。
なお、暑さによる体調の変化については、この記事では扱っていません。環境省の熱中症予防情報サイトなど、公的な情報を確認してください。
こんな方には向かないかもしれません
別の記事のほうが合います
- エアコンを停電中も動かしたい(据置の蓄電池の話になります)
- 容量の計算そのものを知りたい
- 冬の停電(暖房)を想定している
この記事の内容で足ります
- 集合住宅で、持ち運べる電源を1台持っておきたい
- 夏の停電で何を優先するか決めたい
- すでに電源はあり、使いみちを決めたい
よくある質問
Q. 発電機なら、エアコンも動かせますか
A. 出力の大きいものなら動かせる場合があります。ただし燃料の保管が必要で、排気が出るため屋内では使えません。集合住宅では置き場所も含めて現実的でないことが多いです。両者の違いは発電機とポータブル電源はどちらを選ぶ?|屋内で使えるかどうかで、ほぼ決まりますで、メーカー公式の数値を並べて比べました。
Q. ポータブル電源は、車から充電できますか
A. シガーソケットからの充電に対応した製品があります。ただしコンセントから充電するより時間がかかります。対応の有無と所要時間は製品によって違うので、カタログで確認してください。
Q. ソーラーパネルは付けたほうがいいですか
A. 停電が長引く場合には効きます。夏は日照時間が長いので、条件は悪くありません。ただしパネルの出力によって、満充電までにかかる時間は大きく変わります。まず本体を持ってから、必要になったら足すという順番で構いません。
Q. 何年くらい置いておけますか
A. 置いたままにせず、数か月に一度は充電してください。使わないまま放置すると、いざというときに残量がありません。年に何回か、普段の用事(屋外の作業など)で使ってしまうのが確実です。
まとめ
- ポータブル電源でエアコンは、時間がもちません。500Whで30〜50分程度
- 同じ500Whでも、扇風機なら約10時間。桁が違います
- 夏の停電は冷蔵庫との取り合いになる。ここが冬といちばん違うところ
- 容量を増やす前に、消費を減らす。直射を遮る・風の通り道を作る・氷に置き換える
- エアコンを動かしたいなら据置の蓄電池の領域。集合住宅では設置できません
まず「何に使うか」を1つ決めてください。扇風機を一晩と決まれば、選ぶ容量も決まります。



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