止水板と水のう、うちの玄関はどっち?|ハザードマップの浸水深0.5mで分ける家庭の浸水対策と、東京23区の助成

大雨の夕方、東京の戸建ての玄関。左に段ボールとブルーシートで包んだゴミ袋の水のう、右にアルミの止水板。道路には雨水がたまり始めている 防災セット

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東京の下水道は1時間50ミリの雨を流せるように作られています(一部地域は75ミリ)。それを超える雨が降ると、川があふれていなくても道路から水が入ってきます。これが内水氾濫で、線状降水帯や局地的大雨(いわゆるゲリラ豪雨。気象庁はこの語を使いません)で起きるのはこちらです。

自治体のページは「土のう・水のう・止水板を準備」と並べますが、うちは水のうで足りるのか、止水板を買うべきなのかは書いていません。分かれ目はハザードマップの浸水深と、玄関の高さです。その順で並べました。

結論:浸水深0.5m未満なら水のう、0.5m以上なら止水板。半地下は両方+逆流対策

住まい×ハザードマップの浸水深で決める

住まい ハザードマップの浸水深 玄関の対策 足すもの
マンション2階以上 どの色でも 玄関からは入らない。やることは停電・断水・トイレ 水、携帯トイレ、電源
マンション1階・戸建て 0.5m未満(黄) 水のう(ゴミ袋)を玄関に並べる 排水口の逆流止め、段ボール
戸建て・店舗 0.5m以上(橙〜赤) 止水板。区の助成が使える 2階へ上がる準備、車を高所へ
半地下・地下車庫・地下室 どの色でも 止水板+排水設備の点検。豪雨時は地下に入らない 排水口・便器の逆流止め
車がある家 道路冠水の想定あり 水深30cmまでは走れる。60cmでセダンは止まる(JAF) 脱出用ハンマー

浸水深の色の意味(国土交通省の手引き)

ハザードマップの浸水深は0.5m=1階の床の高さ、3m=2階の床下、5m=2階が水没を境に色分けされています。0.5m未満は床下浸水で、玄関の段差を越えるかどうかの水位。ここまでは水のうで止められる範囲です。0.5mを超えると床上浸水で、水のうでは重さが足りません。お住まいの区市町村の「内水ハザードマップ」(下水道からあふれる想定)を見て、自宅の色を先に確かめてください。

住まい別|何を買って、どう使うか

1. マンション2階以上|玄関からは入らない。止まるのは電気・水・トイレ

2階以上の部屋に道路の水は入りません。困るのは、停電でエレベーターとポンプが止まり、水が出なくなることと、1階の電気室が浸水すると建物全体が停電することです。国土交通省は2019年の台風でマンションの地下電気室が浸水し停電が長引いた事例を受けて、建築物の電気設備の浸水対策ガイドラインを出しています。

水は「大雨の前に浴槽に張る」のが基本です(気象庁「自分で行う災害への備え」)。飲用は備蓄水の賞味期限、切らさずに回す方法|長期保存水と普段の水の使い分けの回し方で常備を。

2. マンション1階・戸建て(浸水深0.5m未満)|水のうを玄関に並べる

千葉県が示す作り方は、40Lのゴミ袋を二重にして、半分まで水を入れ、口を閉める。半分で約20kgになるので、運べない方は10〜15Lにします。玄関に隙間なく並べ、段ボール箱に入れると強度が増し、防水シートで包めば長時間の浸水にも耐える止水壁になります(千葉県)。東京都下水道局も同じ工法を案内しています。

もう1つの使い道が逆流止めです。風呂場・洗濯機の排水口、トイレの便器に水のうを沈めると、下水管の水位が上がったときの逆流を抑えられます(千葉県)。「トイレ 逆流 大雨」は8月に検索が跳ねる悩みで、起きてから調べる人が多い項目です。

ゴミ袋 40L・厚手(水のう用に1箱)

普段のゴミ袋で構いませんが、薄手だと二重でも破れるので、0.03mm前後の厚手を1箱、玄関の近くに。段ボール箱は宅配の箱を2〜3個取っておくだけで足ります。

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吸水土のう(水で膨らむタイプ)

水を含ませると数分で膨らむ袋。乾いた状態は軽く、収納が薄いので、マンションの玄関収納に置けます。使い捨てで、1袋の高さは製品ごとに違うので、玄関の段差に合わせて枚数を。

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3. 戸建て・店舗(浸水深0.5m以上)|止水板。区の助成が使える

0.5mを超える想定の場所は、水のうの重さでは止まりません。玄関や勝手口に止水板(パネル)を立てます。世田谷区の助成要件は「JIS A 4716の浸水防止性能に準じ、取り外し・移動ができ、繰り返し使えるもの」で、選ぶときの基準にもなります。

東京都都市整備局は、止水板の助成がある区市町村の一覧を出しています。大田区は個人なら経費の5分の4、上限100万円(区内に住民登録がある場合)。世田谷区は2026年度から制度を始め、工事だけでなく簡易型止水板の購入費も対象です。金額と条件、申請の順番は区ごとに違うので、買う前に「(区市町村名) 止水板 助成」で確認してください。

簡易止水板(玄関用・工事なし)

開口幅に合わせて突っ張るパネル型と、下部に吸水材が付いたシート型があります。玄関の幅と、段差の高さを測ってから。助成を使うなら、購入前に区の要件(JIS準拠の性能表示)を確認。

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止水板(工事あり・アルミパネル)

地下車庫や店舗の間口に、レールを固定して差し込むタイプ。工事費込みで助成の対象になる区が多いので、見積もりの前に区へ。

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4. 半地下・地下車庫・地下室|止水板と排水設備の点検。豪雨時は入らない

東京都下水道局は「半地下家屋、地下室では、道路面から家屋に雨水が流れ込みやすい」「浸水のおそれがあるときは半地下部などへは入らない」「道路面より低い場所にトイレや風呂場があると、下水が逆流する場合がある」としています。世田谷区の資料には、地下室のトイレ・浴室で排水管から下水が逆流して浸水した事例があり、「豪雨時には使用しない」と書かれています。

東京消防庁は「地下室にいる場合は、水圧でドアが開かず脱出できなくなる恐れ」としています。地下は止水板が要ります。そのうえで、降り出したら入らない。

地下車庫の止水板・排水ポンプ

地下車庫は開口が広いので工事型が中心です。排水ポンプがある家は年1回、動くか確かめる(世田谷区「排水設備は定期的に点検」)。

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排水口の逆流止め

地下・半地下の風呂場や洗面の排水口には、水のうを沈めるほかに逆止弁付きの排水口カバーがあります。便器は水のうで塞ぎます。

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5. 車がある家|水深30cmまでは走れる。60cmでセダンは止まる

JAFの冠水路走行テストでは、水深30cmは時速10kmでも30kmでも走りきれた一方、水深60cmではセダンは時速10kmでも止まり、エンジン位置の高いSUVは走りきれたという結果でした。同じ30cmでも時速30kmだと巻き上げた水がエンジンルームに多量に入ります。ハザードマップで道路が0.5m以上の色なら、降る前に車を高い場所へ。

脱出用ハンマー(シートベルトカッター付き)

水圧でドアが開かなくなったときに窓を割る道具。運転席から手が届く場所に固定します。

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6. どの住まいでも|水災補償と防災セット

床上浸水の修理費は火災保険の「水災補償」の範囲ですが、水災を外して保険料を下げている契約があります。証券の「水災」欄を見て、分からなければ無料診断で確認を。

火災保険の無料診断

今の契約に水災補償が付いているか、床上浸水の支払い条件はどうかを確認するサービスです。

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火災保険の一括見積もり(インズウェブ)

上の診断は「今の契約で足りているか」を見るもの、こちらは「他社と比べていくらになるか」を見るものです。水災・地震の補償を付けたときの保険料を、複数社で並べて比べられます。

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防災セット(防災士監修)

在宅避難の土台。携帯トイレ・ランタン・保存水が入っているかを先に確認。セットに水のう用のゴミ袋は入っていないので、2番を足してください。

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根拠1|東京の下水道は「1時間50ミリ」。超えた分が道路から入る

東京都下水道局は「1時間50ミリの降雨に対応できるよう、施設整備を行っています。特に浸水被害の影響が大きい大規模地下街や一定規模以上の床上浸水が集中して発生した地域では1時間75ミリの降雨への対応を進めており」としています。線状降水帯の直前予測は「3時間降水量100ミリ以上」が発表基準の1つ(気象庁)。1時間に直せば33ミリですが、線状降水帯の雨は均等に降らず、1時間50ミリを超える時間帯が出ます。

内水氾濫と外水氾濫

種類 起きること この記事の対象
内水氾濫 下水道の排水能力を超えて、道路や側溝から水があふれる。川があふれていなくても起きる 対象。水のう・止水板が効く範囲
外水氾濫 川の堤防を越えたり決壊して、川の水が流れ込む。浸水深が深く広い 対象外。ハザードマップの色が濃い場所は立退き避難が原則(国交省)

根拠2|ハザードマップの浸水深は「床の高さ」で切ってある

国土交通省「水害ハザードマップ作成の手引き」は、浸水深の閾値を「一般的な家屋の2階が水没する5m、2階床下に相当する3m、1階床高に相当する0.5m」と定めています。内水ハザードマップでは、差が小さいので0.3m・0.5m・1mで細かく分けた詳細版を使う自治体があります。0.3mは大人のひざ下、0.5mが玄関の上がり框の目安です。

手引きは「浸水が想定される区域は原則として立退き避難が望ましいが、自らの確認・判断により屋内安全確保も可能な場合がある」としています。水のう・止水板は「屋内安全確保」を選んだ人の道具で、深い色の場所で避難の代わりにはなりません。

根拠3|2026年5月29日から、大雨の情報の名前が変わった

気象庁は2026年5月29日から、警報や注意報の名前に警戒レベルの数字を付けて発表しています。大雨警報→「レベル3大雨警報」、土砂災害警戒情報→「レベル4土砂災害危険警報」、新設の「レベル5氾濫特別警報」。線状降水帯については、半日前予測(気象解説情報)→直前予測(気象防災速報、発生の2〜3時間前が目標)→発生情報の3段階です。

情報の段階と、家でやること

段階 情報 家でやること
前日〜当日朝 線状降水帯半日前予測(気象解説情報) ハザードマップの色を確認。ゴミ袋・段ボール・シートを玄関へ。浴槽に水。車を高所へ
2〜3時間前 線状降水帯直前予測(気象防災速報) 水のうを作って並べる。止水板を立てる。排水口・便器に水のうを沈める。半地下に人と物を置かない
降り始め〜 レベル3大雨警報、キキクル 外に出ない。地下に入らない。1階の人は2階へ。レベル4までに危険な場所から避難(東京消防庁)
発生 気象防災速報(線状降水帯発生) 車で動かない。浸水した道路を歩かない

直前予測の精度は気象庁の想定で「適中率50%程度、捕捉率80%程度、発表された地域で3時間100mm以上の大雨となる割合90%程度」。外れても大雨にはなる情報なので、出たら水のうを作って損はありません。

買ったあと|降る前の30分でやること

順番(千葉県・東京都下水道局・気象庁の手引きから)

こんな方には向かないかもしれません

前提が合わない場合

よくある質問

Q. ゲリラ豪雨と線状降水帯は何が違いますか

気象庁の用語集では「ゲリラ豪雨」は使わない語で、「局地的大雨」(数十分・狭い範囲・数十mm)に言い換えられています。線状降水帯は長さ50〜300kmの雨域が数時間停滞するもので、雨量の桁が違います。家でやることは同じで、違うのは猶予の長さです。

Q. 水のうは何個要りますか

玄関の幅を、並べたときの1袋の幅(40L袋で40cm前後)で割った数を、2段。幅90cmの玄関なら2個×2段=4個が目安です。勝手口や掃き出し窓にも必要なら同じ計算を足します。

Q. 止水板はいくらしますか

簡易型と工事型で価格の桁が違い、製品ごとの幅も大きいので、この記事では金額を書いていません。区の助成は申請の順番(購入前か後か)が区ごとに違うので、値段を調べる前に区のページを開いてください。

Q. 止水板は置くだけでいいですか

簡易型でも、下端と両端の隙間から水が回ります。製品の説明どおりにパッキンを密着させ、突っ張りや固定を効かせてください。千葉県の資料は水のうの段ボール工法でも「地面が平らでないところに置くと、底との間に隙間ができて水が入る」と注意しています。玄関の床が段差や傾斜になっている家は、その部分に水のうを足します。

Q. 止水板のデメリットは何ですか

立てる手間と時間(直前予測が出てからでは間に合わないことがある)、保管場所、間口ごとに1枚ずつ要ること、費用の4つです。費用は区の助成で軽くなりますが、手間は減りません。もう1つ、止水板は浸水深0.5m程度までの道具で、ハザードマップの色が濃い場所や川があふれる外水氾濫には効きません。その場所では国交省の手引きどおり、早期の立退き避難が先です。

Q. マンションの上の階なら何もしなくていいですか

玄関からは入りませんが、電気室やポンプが浸水すると停電と断水になり、トイレが流せなくなるのが上層階の困りごとです。1番の携帯トイレと電源が先です。

Q. 排水口から水が上がってきたらどうしますか

水のうを沈めて、その上に重いものを載せます。地下・半地下のトイレと風呂は使わない(世田谷区)。上がってきた水は下水なので、触ったら手を洗い、収まったあとは消毒を。

まとめ

この記事の要点

  • 東京の下水道は1時間50ミリ設計。超えた雨は川があふれなくても道路から入る(内水氾濫)
  • ハザードマップの浸水深0.5m(1階の床高)が分かれ目。未満なら水のう、以上なら止水板、半地下は両方+逆流対策
  • 水のうは40Lゴミ袋二重・半分の水・段ボール+シート。排水口と便器にも沈める
  • 止水板は区の助成が使える(大田区は個人に5分の4・上限100万円、世田谷区は簡易型の購入も対象)。購入前に申請
  • 車は水深30cmまで、60cmでセダンは止まる。降る前に高所へ
  • 2026年5月から情報の名前が変わった。線状降水帯直前予測が出たら水のうを作る

雨は毎年来ます。ハザードマップの色を1回見て、ゴミ袋1箱と段ボールを玄関の近くに置いておくだけで、最初の30cmは止められます。

この記事で確認した一次情報

出典(名称のみ)

  • 東京都下水道局「浸水への備えを万全に!」……1時間50ミリ・75ミリ、簡易水のう、半地下・地下室の注意、下水の逆流
  • 国土交通省「水害ハザードマップ作成の手引き」……浸水深の閾値(0.5m・3m・5m)、詳細版(0.3m・1m)、避難行動の考え方
  • 千葉県「家庭でできる浸水対策」……ゴミ袋の簡易水のう工法、段ボール・防水シート、排水口と便器への使い方
  • 世田谷区「各自でできる浸水対策」「止水板設置等助成制度のご案内」……地下室の逆流事例、排水設備の点検、助成要件(JIS A 4716)、簡易型止水板の購入も対象
  • 大田区「止水板設置助成制度」……個人は経費の5分の4、上限100万円
  • 東京都都市整備局「各区市町村の助成制度一覧」……止水板の助成がある区市町村
  • 東京消防庁「台風・大雨に備えよう」……2026年5月29日の情報改定、レベル4までに避難、地下室のドア、側溝の清掃
  • 気象庁「天気予報等で用いる用語(降水)」「線状降水帯に関する情報」「新たな防災気象情報について」「自分で行う災害への備え」……ゲリラ豪雨は使用しない用語、直前予測の基準と精度、名称の変更、浴槽に水
  • 国土交通省「建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン」……電気室の浸水と建物全体の停電
  • JAF「冠水路走行テスト」……水深30cm・60cm、セダンとSUV、時速による差

このサイトを書いている人

防災備蓄おじさん/防災備蓄ナビ

2011年の東日本大震災で両親が被災し、1週間を車の中で過ごしました。当時、実家には備蓄が何もありませんでした。それをきっかけに、東京の自宅と実家で同じものを備蓄し、気づいたことを共有してきました。その過程で分かったことをまとめています。

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