実家の親に防災の備えをさせる|「同じものを持つ」といちばん続く

実家の親と同じ防災の備えを持つ方法を解説した記事のタイトル画像 家族構成別

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実家の親が防災の備えをしていない。気にはなっているけれど、電話で「用意しておいてね」と言うくらいで、それ以上どうしていいか分からない。

防災グッズを送ってみた方もいると思います。ただ、送ったきり、押入れの奥で開封もされていないことは珍しくありません。

この記事では、送るより先にできることを1つ提案します。

オレンジ色に黒の切り替えが入った1人用の防災リュック。前面に反射材の十字マークがある
編集部が私物として用意している1人用の防災リュックです。実家にも同じものを置いています。この記事で紹介している商品ではありません。

結論:自分と実家で「同じもの」を持つと、いちばん続きます

先に結論です。

  1. 同じ防災バッグを2つ買って、1つを実家に置く
  2. 中身を同じにする。「あれは使えた」「これは要らなかった」がそのまま話として通じる
  3. 年に1回、同じ日に一緒に中身を見る。片方が忘れても、もう片方が気づく
  4. 地域差のあるものだけ、あとから足す

ここまでで足りる方は、この先は読まなくて大丈夫です。以下はそれぞれの理由です。

図:同じものを持つ4ステップ

1

同じバッグを2つ買う
1つを実家に置きます。別々のものを選ばないことがポイント
2

中身も同じにする
「あれは使えた」がそのまま話として通じます
3

年1回、同じ日に一緒に見る
片方が忘れても、もう片方が気づきます
4

地域差のあるものだけ足す
共通のものを先に、違いは後から

なぜ「送るだけ」だと続かないのか

送った側と送られた側で、こういうことが起きます。

>

  • 中身を知っているのは送った側だけ。親は何が入っているか分からないまま置いている
  • 期限が切れても誰も気づかない。送った側は「送った」で終わり、親は中身を知らない
  • 会話にならない。「あれ届いた?」「うん」で終わってしまう

備蓄でいちばん難しいのは、買うことではなくそのあと放置されることです。買った日がいちばん充実していて、そこから何年も触らない。これは実家に限らず、自分の家でも同じです。

図:送ったあと、こうして忘れられていく
1
送る
中身を選んだのは送った側だけ
2
置かれる
親は何が入っているか分からないまま押入れへ
3
期限が切れる
送った側は「送った」で終わっている
4
誰も気づかない
次に開けるのは、必要になったとき

買った日がいちばん充実していて、そこから何年も触らない。これは実家に限らず、自分の家でも同じです。

なぜ「同じもの」だと続くのか

このサイトの運営者は、2011年の東日本大震災で両親が被災したことをきっかけに、この方法を続けています。当時、両親の家には備蓄が何もありませんでした。

そのあと両親と話し合って、東京の自宅と実家で同じものを備蓄することにしました。理由はシンプルで、同じものを持っていれば話が通じるからです。

  • 「あの缶パン、思ったより甘かったね」
  • 「トイレの回数、あれだと足りないと思う」
  • 「銀マット、うちは玄関に移した」

中身が同じなら、こういう会話がそのまま成立します。片方が気づいたことが、もう片方にそのまま使えます。防災の話が「用意した?」という確認ではなく、普通の雑談になります。

これが続く理由です。義務感ではなく、話す材料になっているからです。

防災リュックを開けた状態。アルファ米、5年保存の缶パン、簡易トイレ、アルミの保温シートなどが入っている
編集部が私物として用意している防災リュックの中身です。実家にも同じものを置いています。この記事で紹介している商品ではありません。

やり方1:同じバッグを2つ買う

市販の防災セットを2つ買って、1つを実家に送ります。別々のものを選ばないことがポイントです。

「実家用には高齢者向けを」と考えたくなりますが、最初は同じものにしてください。違うものにすると、中身の話が通じなくなり、結局この方法の利点が消えます。

体格や持病に合わせた調整は、次の段階で足します。


やり方2:中身を同じにする

市販セットは持ち出し用なので、そのままだと足りません。足すものも同じにします。

特に、避難所で暮らすための道具は市販セットにまず入っていません。ガムテープ、銀マット、サンダル、手袋、ラップ。どれも安くて軽いので、2セット分買ってもたいした金額になりません。

常備薬だけは別です。ここは親と自分で違うので、それぞれで用意します。お薬手帳のコピーを入れておくと、災害時に薬の名前を説明しやすくなります。

図:そのまま同じにするもの/親に合わせて変えるもの

親に合わせて変える

  • 常備薬とお薬手帳のコピー
  • リュックの重さ(背負えるか)
  • 在宅備蓄を厚くするかどうか

そのまま同じにする

  • バッグ本体
  • 水・非常食・簡易トイレ
  • ガムテープ・銀マット・サンダル・手袋・ラップ

体格や持病に合わせた調整は、同じものを揃えたあとの段階で足します。

やり方3:年に1回、同じ日に一緒に見る

日を決めます。防災の日(9月1日)でも、3月11日でも、誰かの誕生日でも構いません。

その日に電話しながら、お互いバッグを開けます。

  • 食品の期限を見る
  • 電池の液漏れを見る
  • 「今年これ足した」を報告し合う

片方が忘れても、もう片方が「今日だよ」と言えます。1人だと忘れますが、2人だと片方が思い出します。これが同じものを持つことの、いちばん実用的な効果かもしれません。

やり方4:地域差のあるものだけ、あとから足す

同じにしたうえで、違う部分だけ足します。運営者が両親とやり取りするなかで分かってきた違いです。

都市部 地方
移動 徒歩での帰宅を想定。歩きやすい靴 車中泊の可能性。車に一式積んでおく
給水所まで運ぶ距離が長い。キャリー付きの給水袋が効く 井戸や川がある地域も。ただし飲用には浄水が必要
寒さ 建物の中に入れることが多い 屋外・車内で過ごす前提の防寒
情報 スマホが通じやすい 電池式ラジオの優先度が上がる
買い足し 復旧後は店が早く開く 店まで遠く、備蓄の日数を多めに

一方で、共通して必要なものは思ったより多いというのが、続けてみて分かったことです。水、簡易トイレ、常備薬、明かり、体温を保つもの。ここは都市部でも地方でも変わりません。

まず共通のものを揃えて、違いは後から足す。この順番のほうが、話が早く進みます。

親が乗り気でないとき

「そんなものは要らない」と言われることもあります。

そのときは、説得しないほうがいいと思います。代わりに、こちらが2つ買って1つを置いてくるだけにします。使うかどうかは向こうが決めることです。押入れに入ったままでも、無いよりはいい、くらいの気持ちで構いません。

年に1回の点検も、最初は自分だけがやればいいです。「今年これ入れ替えたよ」と話しているうちに、向こうから中身の話が出てくることがあります。

備えは、納得しないと続きません。急がせないほうが、結果として長続きします。

図:2つの方法の違い

同じものを2つ持つ(この記事の本筋)

  • 中身が同じなので話がそのまま通じる
  • 年1回の点検を一緒にできる
  • 中身を決めるのはこちら側

カタログから選んでもらう

  • 本人が選ぶので使われやすい
  • 中身が違うので話は通じにくい
  • 選ぶ過程で「何が要るか」を考えてもらえる

押し付けたくない相手には後者が向きます。どちらが優れているという話ではありません。

親が自分で選びたいと言うとき

「使うかどうか分からないものを送られても困る」と言われることがあります。こちらで中身を決めて送る方法が合わない場合は、カタログから本人に選んでもらうという手もあります。

防災用品のカタログギフトがそれにあたります。同じものを持つ利点は薄れますが、開封されないまま置かれ続けるよりは、実際に使われる可能性が高くなります。選ぶ過程で「うちには何が要るか」を本人が考えることにもなります。

いのちをまもるカタログギフト「LIFEGIFT」

なお、カタログギフトにする場合も常備薬とお薬手帳のコピーだけは別に用意してください。ここはカタログに載っていませんし、人によって中身が違います。

用意する前に確認する5項目

図:親の家に置く前に確認すること

  • 親の家のどこに置くか 押入れの奥だと取り出せません。玄関か寝室の近くに
  • 親がそのリュックを背負えるか 体力に合わない重さだと、いざというとき置いていくことになります
  • 常備薬とお薬手帳のコピー ここだけは同じにできません
  • 親の地域の避難所がどこか 一緒に調べておくと、電話で場所を確認できます
  • 点検の日を決めたか 決めないと、まず忘れます

2番は特に見落とされます。大容量のポータブル電源を送っても、高齢の方には運べません。持ち出す前提のものは軽く、重いものは家に置いておく。この切り分けが要ります。

図:送るだけ/同じものを持つ

送るだけだと

  • 中身を知っているのは片方だけ
  • 期限切れに誰も気づけない
  • 「届いた?」「うん」で終わる

同じものを持つと

  • 気づいたことがそのまま相手にも使える
  • 点検日を2人で思い出せる
  • 防災の話が普通の雑談になる

こんな方には向かないかもしれません

  • すでに親が自分で備えている方 — 同じにする必要はありません。中身を聞いて、足りないところだけ補うほうが早いです
  • 実家が遠くて年1回も帰れない方 — 電話でもできますが、最初の1回だけは一緒に開けたほうが定着します
  • 親と防災の話をするのが難しい状況の方 — 無理に始めないでください。この方法は会話が前提です
  • マンション高層階にお住まいで、親が戸建ての方 — 前提が違いすぎるので、共通部分(水・食料・トイレ・薬)だけ揃えるところから
図:この方法が向く/向かない

向かないかもしれない

  • すでに親が自分で備えている
  • 年1回も帰れない距離
  • 防災の話をするのが難しい状況

向いている

  • 離れて暮らす親の備えが気になっている
  • 送ったきりで使われていない心配がある
  • 親と定期的に連絡を取っている

よくある質問

Q. 2つ買うと費用が倍になります A. 全部を2つにする必要はありません。水・食料・簡易トイレ・薬は人ごとに要りますが、ラジオや工具は各家に1つで足ります。まず共通の必需品だけ2つ、が現実的です。

Q. 実家は高齢の2人暮らしです。何人分見ればいいですか A. 2人分です。ただし持ち出し用は軽くして、在宅備蓄を厚くするほうが実態に合うことが多いです。高齢の方が重いリュックを背負って避難するのは現実的でないことがあります。

Q. 点検の日に何を話せばいいか分かりません A. 期限のチェックだけで十分です。「これ来年切れる」「じゃあうちも同じだ」で会話になります。防災の話をしようと構えなくて大丈夫です。

Q. 送るならどう送るのがいいですか A. 中身を出した状態で送ると、開けたときに何が入っているか分かります。リストを1枚入れておくと、あとで見返せます。

まとめ

図:この記事の要点

  • 送るだけだと、中身を知っているのが送った側だけになり、放置されます
  • 同じものを2つ持つと、「あれは使えた」がそのまま話として通じます
  • 年に1回、同じ日に一緒に開ける。片方が忘れても、もう片方が気づきます
  • 共通のものを先に揃えて、地域差のあるものだけ後から足します
  • 乗り気でないなら、説得せずに置いてくるだけでいいです

完璧に揃える必要はありません。まず同じものを1つずつ持って、年に1回話す。そこまでで、実家の備えとしては一区切りです。

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このサイトを書いている人

防災備蓄おじさん/防災備蓄ナビ

2011年の東日本大震災で両親が被災し、1週間を車の中で過ごしました。当時、実家には備蓄が何もありませんでした。それをきっかけに、東京の自宅と実家で同じものを備蓄し、気づいたことを共有してきました。その過程で分かったことをまとめています。

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